<8枚玉狂想曲、その1>
8枚玉。
このページに来る人ならすぐに何だか分かってしまう「8枚玉」。これを、フツーに暮らしてる日本人100人に聞いてみると、結構一人も知らなかったりするかもしれない。「なにそれー、なんで玉なのに8マイなのー?8個でしょー」ってな反応が予想される。
僕たちはそんなギモンは一瞬たりとも考えず、すぐにあの、シルバークロームの短い、凝縮された滑らかに回転するモノを思い浮かべる。そう、我々はそういった特殊な人種だったのだ。この、特殊な世界に共に生きているのが自分たちであるということを、まず認識しなければならない。
特殊な世界に生きる、特別な人間達、、、決して「異常な世界に生きる異常な人間」などと言われてはならない。そのような誤解とは断固戦わねばならない!
さて、そんな世界を共有する者同士の結束感を感じつつ本題に入ろう。ズミクロンである。35mmである。そんでもって、ファアスト、バアジョンである。それが僕らの8枚玉である。
僕が初めて8枚玉と出合ったのは、バンコクの「Camera
Collection」という中古カメラ屋であった。その店の若旦那、というかドラ息子というか、とにかく好き放題に売りもんのカメラをいじってる男と話していたら、ほら、こんなの入ったぞ、と言わんばかりに僕に向かって差し出したのが8枚玉だった。

8枚玉を買おうとは、ぜんぜん考えてなかった。なんせズミルックスの初期球は持ってたし、ズマロン2.8も気に入ってたし、ズミクロンを買う理由が無かった。ところが、だ。そのドラ息子が言い出した値段が45000バーツ(135000円くらい)。ありっ?安い、、、のかな?
気になってそのレンズを眺め回してみた。美品、、、、、だ。無傷、、、、、だ。レンズも無傷。でもコーティングが見えない。それともアンバー(琥珀色)のコーティングで分かりにくいだけか?
銀座の中古カメラ市に行ったときのことを思い出した。比較的安い店で見せてもらった8枚玉。だいたい23万円前後だったろうか。スクリューマウントだと35万くらいした。その、前にふくらんだガラスの精密感に、写りそうだなーと思いつつ、でも高すぎるなーと思って手は出さなかった。というわけで、45000バーツは安いのだ。絶対安い。これはひょっとして、千載一遇のチャンスなのかもしれない。千載一遇と言ってみたわりに、こういうシチュエーションがけっこう頻繁にあるような気もするが、そこは言葉のあやチャンである。やはり今回のこの8枚玉、千載一遇の出会いのような気がする、、、、
かなり気をそそられつつも、「コーティングが薄いなあー、削っちゃったんじゃないの?」とか、「レンズ取っ替えただろ?」などと厳しいツッコミを続けつつ、ころあいを見計らって、「ちょっと試し撮りしてもいいか?」と聞いてみた。
ドラ息子は「オッケーオッケー、パスポート持ってるか?」といとも気軽に応じてくれた。僕も、いとも気軽にパスポートと沈胴ズミクロンを差し出した。
あとで帰って来たときに僕のパスポートと沈ズミはいとも気軽に誰も居ない店の真中の机の上に置いてあって、二度とこんなことするのは止めようと思った。とても勉強になった。良かった良かった、パスポートが無事で、、、、
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