<ズマロン35mmF2.8、160万番台>

日本を出る直前、僕はどうしてもズマロンが欲しくなった。
ヤフーオークションやeBayで何度も検索したが、

 1.メガネなし
 2.160−170万番台
 3.コーティングがバッチリのっている、しかも濃いブルーのやつ

というのは見当たらなかった。

こんなとき、もし「相場のお金はちゃんと払います」という気分になってしまったら、、、、、

ところは新宿、怪しげな店の建ち並ぶ歌舞伎町にまず向かう。軍資金はアルタ横の住友銀行あたりでおろしておくのがいい。相場は8−10万というところか。

ここで念のために12万おろしてしまうかどうかがマニア度判定の一基準になっている。そのとき僕は、歌舞伎町の魑魅魍魎に操られて12万8千円おろしていた。恐るべし、歌舞伎町の念力。

区役所通りを奥へ入る。今日も呼び込みがうるさい。これが妻と一緒だと誰にも声をかけられないのだが、その場合はいざ買い物の際に厳しいチェックが入ることを忘れてはいけない。そう、世の中は甘くないのだ。

まわりくどいのはこの辺にして、鳴く子も黙る歌舞伎町、その中でも怪しさ全開の風林会館の一階にトーホーカメラはある。なんでこんなとこに店作ったんだい?トーホーさんよ、、、

でもその品揃えには驚くべきものがある。

今日はマップにも中古市場にも、当然「きむら」にも無かったズマロン2.8があるある10本位ある。しかも160万台が1本170万台が2本。狙っていた濃いブルーのコーティングだ。よし、勝負だ。

前の客はM5の美品を売ったらしく、何十万あるのか分からない札束を数えている。歌舞伎町の店先で大金を数える客、と店長。ここで「あのズマロン、見ていいですか?」と声をかけられるようになった自分の成長を素直に喜びたい気分だ。そう、自分で自分を誉めてやりたいお買い物、とはこういうことを言うのだろう。

レンズを裏表とも覗き込み、絞り羽を各段見る。なかなか完璧というのは無い。そのズマロンもヘリコイドオイルが多すぎるような気がした。しかしシリアル1679418。170万台のコーティングはちょっと濃すぎるような気がした。ここまで来るとカンだけの世界だ。160万番台に望みを託した僕は、10万8千円のそいつを買うことにした。中古のくせに消費税がつくというのは計算していなかったが、僕の崇高な望みはそのくらいのことでは揺るがない。

そして、今僕の手元にはズマロン35mmF2.8、160万番台のコーティングのしっかり載ってるやつがある。とことんこだわって手に入れたレンズがいい映りをすると本当に嬉しい。

ズマロン2.8は決して解像度がいい訳じゃあない。でも狙っているところと背景のメリハリ、そしてボケの自然さでスペックをはるかに超える絵を作ってくれる。

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