M型ボディの愉しみ
僕が最初に買ったM型ボディはM6TTLだった。2年間はたっぷりと、このボディにお世話になった。
平行して使ったものにはM2、M3、M4-Pなどあったが、結局内蔵露出計の便利さが決め手で、メインとしてはM6TTLを使っていた。

とてもまっとうな選択だと思う。実用本位でいいじゃないか。

ところが、、、、
いったいいつごろからだろう、、このまっとうな選択が静かに静かに、他の人に理解されないような選択に変わっていったのは?

そう、いまやバリバリに使われているのはM3、DS、、、つまりダブルストローク。というとカッコいいが2回巻かないとシャッターが切れないという理不尽なメカ。このあいだ知り合いのオーストラリア人にちょっと触らせてあげたら、1回巻き上げても切れないもんだから、その巻き上げたレバーがさらに回るものだと力ずくで巻き上げようとしていて危うく壊される所だった。オーストラリア人に触らせるときは巻き方をしっかり教えておかないとダメだ。
そんなM3を、思い出しつつ数えてみたら、今まで都合10台くらい使っていた。そのうち3台が今も残っている。すべてダブルストローク。70万番台前半。他のボディは、かろうじて状態のいいM2が一台、小型CLが一台。そしてバルナックのIIIaが一台。いずれもいつ里子に出されてしまうか分からないほど使用頻度が少ない。以前メインだったM6TTLにいたっては母親が付き合いで始めたカメラサークルにもちこまれ、ときどき話のタネに使われるという寂しい余生を送っている。
残っている3台のM3にはほぼ満足しているので、新たにボディを捜す必要は全くないのだが、ウェブを見るたび、そしてカメラ屋に行くたび、ついつい繰り返してしまうのが、

えーっと、巻き上げレバーの下が妙に空いてるやつはないかなーっと、、、

ここの読者なら分かるだろう、あの、妙に足りない感じの部分。最初に見たときゃパーツが足りないのかと思ったぜ、M3初期型よ。

-で、そこだけ見ながら探していくと、お、あったあった、うんうんファインダセレクタレバーもないな。
-おっとトップカバーがイマイチだな、、、次いこ、次。
-お、これはきれいだけどバルカナイトが欠けてるぞ、、あれは修正きかないからなぁ、、、もうちょっと欠けが小さけりゃなんとかなるんだが、、、
-お、これは欠けがない。しかも修正跡もないぞ!アクセサリーシューの方はと、、、、おっ、出っ張りが半円だ! 久しぶりだなー。
-ファインダーはどうだ、、、、うーむ少し曇ってる、、、でもこれはバルサムのところじゃなさそうだな、、、これなら直しがきくか、、、よしちょっといじらせてもらおう、「あのー、すみませーん」
なーんて具合に驚くほど短時間にプロセスは進行し、ついつい「あ、これ、いただきます」なーんてトントン拍子に話がまとまったりするわけである。

というわけで1台、また1台と手に入れて、そして2台買っては1台売って、今や完全にM3ダブルストロークがメインボディとなっている。もちろんガラス圧板で福耳。とにかく初期なほどいい。この初期っつーのはけっこう頻繁に市場で見かけるけど、さすがライカである。完璧なのはまずないので、いつまでも追っかけられるようにできている。そこまで気を遣わなくてもいいのに、、、

例えば、
M3DSの初期、75万番台くらいまでので1000分の1秒が出ているやつは、ほとんどない、、、

これに気付くと、店で選ぶときには異常なほど多くシャッターを切る。特に500分の1と1000分の1を何回も切る。大抵は音に差がない。しかし、ごくまれに、1000分の1の方が500分の1よりシャープに切れているのが音で分かるときがある。こうなるとまた、「これ、ください」となって家に持ち帰り、テレビ画面の前でシャッタースリット幅のチェックになだれ込むことになる。

1000分の1が出ている固体では、テレビ画面をシャッター幕ごしに見ると、1.5−2mmくらいのスリット幅になる。さらに500分の1にしたときにその倍3mmくらいまで広がるようなら、その固体のシャッターの状態はまずまずである。お店で音で判断した後に持ち帰って、このテレビチェックをやって実は結構バラバラだった、ということもある。こうなるとこのM3はまたもとの店に委託で売られることになったりして、カメラ屋さんホクホク、クラシックカメラの流通を縁の下でささえているイマジュンライカということでめでたしめでたし、、、、
と、縁の下でささえるだけの人生では寂しいので新たなM3DSを求める旅に出発だ。行けーレモンだ、新宿だー。ヤフーもイーベイも毎晩見るぞー。眠いけどがんばるぞー、、、となって消耗人生まっしぐらである。ツライけれども仕方ない。あのM3DSのためなのだ。

なにしろあの、巻上げがいい。ラチェット音が無いのだ。スーっと、すんごい静かに巻き上げられる。そんなカメラ他にあるか?

それにあの、シャッター音がいい。チャ、と、真鍮同士が触れ合う音。この音の柔らかさをさらに実感したいときには、バルブで先幕と後幕を別々に動かしてみると良い。トン、、、、トンと、そりゃーもう楽しい音である。これを聴きだすとシングルストロークになった後のM2-M6まで、おしなべて興味がなくなってくる。M7は静かだけどシャッターストロークがダメだ。MPもけっこういいけどなんであんなに高いんだ。となってやっぱM3DSに戻ってくる。

とはいえ、実はウチの3台のM3DSも完璧ではない。一台は0.85ファインダー。もう一台もファインダーがイマイチだったので他のM3のと取り替えてもらったもの。もう一台はクリーニングしてテスト中。というわけで、今日もM3の棚を見ると足が止まるわけである。
M3DS探求の旅は、それはそれで面白いのだが、難点が一つある。よりよいM3DSを探し続けるあまり、肝心の写真を撮りに行く機会が減ってしまうのだ。ボディばかりそろって作品が増えないというのがアタリマエになっちゃうと、あの、母親のところに里子に出したM6TTLよりも可愛そうなM3DSになってしまうのではと不憫で仕方ない。ライカを使うものに悩みはつきないのだった。

思えば、ライカライカストーリーのボディの項では、「ボディはどれでもいーんじゃ」なんて言っていたのだ。できることならあの純粋な日々に帰りたいと思うこのごろである。

イマジュンライカトップへ戻る